「葉月さん、お疲れ様です、気をつけて行って下さいね」

いつものスタッフに「笑顔」でそう言われ
少し照れながら・・・俺はスタジオを出た

今日は一緒に撮影に入るはずだったモデルが急病
俺は・・・・一人分で撮れる範囲だけ撮影を済ませ
午後からの大半の時間・・・
思いもしない「フリータイム」をもらった

もちろん、急ぐのは独り暮らしのの部屋
今日はバイトも休みで家にいるはずだ


「もしもし?珪くん?」
「ん、俺」
「今日は撮影が入ってたんだよね?今休憩なの?」

「おまえに会いたい」
「え?」
「今から行く、待ってろ」

それだけ言って、俺は電話を切った
何が起こってるか解からないの驚いた顔を思うと
なんだか、嬉しくて仕方ない

玄関を入ったら・・・・すぐに抱きしめようか

それとも、神妙な顔をして・・・もっと驚かそうか

あれこれ考えるだけでも楽しくて・・・
足早に俺は駅へ向かった



駅に着くと、いつもならすぐに改札を抜ける
でも撮影の休憩に出るはずだった弁当を食わずにスタジオを出てきた俺は
朝飯も食っていないし・・・空腹だった
だから・・・はばたき名物の店に立ち寄ってから電車に乗り込んだ

土産を手に向かうの部屋
マンションのエントランスでインタホンを鳴らすと
いつものおまえの声が聞こえる
エレベーターを上りきると・・・そこで既にが待っていた


「珪くん、どうしたの?」
「ん、休みになった、ただそれだけ」
「お休み?もうびっくりしたよ、携帯の電源も切れてるし」
「ん、驚かそうって思った」
「もぉ意地悪」

そう言って、は俺の腕を取ろうとして
ぶら下がった袋に気づいた


「あ、珪くんお土産だ〜」
「昼飯、まだだから買ってきた、おまえの分もある」
「うわ〜、赤いパッケージってことは、やっぱり!」






はばたき名物のシュウマイ・・それは俺の大好物
の作ったものが美味しいのはもちろんだけど
この美味しさは、また別・・・


「それじゃ、お茶いれるね、ちょっと待ってて」

そう言って、がキッチンへ消えた
俺は目の前に置かれたシュウマイ弁当と
のために買ってきた15個入りのシュウマイの箱を眺める

相変わらず・・・うまそうなシュウマイ
俺は我慢できずにひとつ口に放り込んで・・・・あることを思いつく


「珪く〜ん、日本茶でいい?」
「ん〜」

口の中にシュウマイがあるから、まともな返事が出来ない

「あ、もしかして、もう食べてるの?」
「ん〜」

お茶を・・が持ってきたときには
テーブルの上のシュウマイは消えていた


「お待たせ、って!あ〜、シュウマイは?!」

「ない」
「え〜、もう食べちゃったの?うそ!?」

「本当」
「信じられないぃ、いくらシュウマイが好きでも早すぎ!」


「ん、シュウマイ・・・もう・・・おシュウマイ」

「え・・?」


「おシュウマイ・・・おしゅまい・・・おしまい」


俺はテーブルの下に隠したシュウマイを取り出した





「あ、こんなところにシュウマイが・・・」
「珪くん・・・寒い」

「ん?」
「珪くん・・・寒いね」


お茶は温かいけど・・・?
何で寒いんだろう・・・?
見るとは瞳をうるませていた

え?
俺・・・泣かすようなこと・・・したのか?


「どうした?」
「ううん、な〜んでもない
 愛してるよ、珪くん!」

そう言って・・・俺の頬にキスをくれた
よく解からないけど、まあ、いいか

シュウマイ・・・・それは俺の大好物
でも、おまえのキスにはかなわない



END



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